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[第二回 ふげん社写真賞 総評]

   第2回目のふげん社写真賞の審査も無事終わって、ほっとしている。エントリー総数が183名と、前回よりも増えたというのもよかったが、何よりも寄せられる作品のレベルが上がってきている。どんな賞でも、大きな反響を呼び起こしつつ成長していく時期があるものだが、ふげん社写真賞もそんなサイクルに入ってきたということだろう。


 そのようないい流れをよく示しているのが、グランプリを受賞した川口翼さんではないだろうか。彼は昨年もふげん社写真賞に応募し、最終審査にまで残った。まだ若く、荒削りなところはあったが、将来を大きく嘱望できる作品だった。それが、今回の受賞作では、勢いだけでなく、何をどのように表現していくのかというベースの部分が、しっかりと確立されてきた。来年に予定されているふげん社での展示、写真集の刊行が本当に楽しみだ。
 

 川口さんに限らず、2年続けて応募してきた人の作品のレベルは明らかに伸びている。また、今回は日本人だけではなく、ネパール、中国、イスラエル出身の作家も最終審査に残ったのもとてもよかったと思う。彼らの作品には、日本人の写真家とはやや異なる志向性を感じる。展覧会だけでなく、クオリティの高い写真集の刊行を目標とするという本賞の趣旨も、かなり広く理解されてきたようだ。次回も、ふげん社写真賞がもう一回り大きく成長できるような意欲的な作品が、多数応募されることを期待したい。

飯沢耕太郎(写真評論家)
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主催者の粋な計らいで、老舗のロシア料理店で祝賀会。ピロシキ、ボルシチ、ジョージア産の美味しいワインをいただきながら、グランプリを受賞した川口翼くんを観察してみた。
よく食べ、よく呑み、まあまあ喋る。でも、口癖は「とりあえず」で、声が小さい。
二軒目、行き場をなくした若者たちが群がるガード下の激安居酒屋でへんてこサワーを呑みながら、これから写真集を造る現場では「とりあえず」は禁句、自分が思うこと、やりたいことは大きな声で相手に伝えるように!と伝え、終電前に別れた。
老舗のロシア料理店に来る人たち、ガード下の激安居酒屋に来る人たちにも、これがぼくのデビュー写真集です!と、大きな声で伝えられる写真集を造ろうぜ!
翼、とりあえず、受賞おめでとう!

町口 覚(造本家)

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躊躇う理由があるとすれば、若すぎることだった。
昨年の木原千裕さんは年齢制限ギリギリで1WALLのグランプリとふげん社賞の2冠に輝いた。いわば満を辞しての受賞だった。
対して、川口翼さんは平成11年生まれの22歳。写真学校を出て未だ2年。製本工場で働きながらやや古風な作家修行を開始したばかりなのである。昨年は誰よりも大きい段ボールに自作のダミーブックと大判の作品の束を詰め込んで提出。今年は募集初日に一番乗り。一生懸命と、枠に収まらないイメージの奔流がとにかく記憶に残る人なのである。心惹かれるが受賞はもう少しあとねと思っていた昨年から、大きく飛躍を遂げた。
 贈る言葉。于武陵『勧酒』
「勧君金屈巵 満酌不須辞 花発多風雨 人生足別離」(コノサカズキヲ 受ケテクレ
ドウゾナミナミツガシテオクレ ハナニアラシノタトヘモアルゾ 「サヨナラ」ダケガ人生ダ 井伏鱒二訳)

 渡辺 薫 

(渡辺美術印刷株式会社 代表取締役)

[第二回エントリー集計結果]

第二回ふげん社写真賞は、2022年4月1日(金)〜6月30日(木)に募集を行い、183名の方にご応募いただきました。​

応募者の性別、世代、居住地、応募回数の割合を下記に発表いたします。

性別

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世代

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​居住地

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応募回数

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