

第四回 ふげん社写真賞 グランプリ受賞作品
守田衣利「Moon Rainbow」
あの暗い部屋にあったモニターの中で、
あなたの心臓が点滅していた。
それは船をむかえる港の灯台の光にも似て。
くりかえされる呼吸にそっと耳をすますと、
やすらかな夜がみちていく。
あなたの海のうねりがとどいて、
あなたの鼓動とかさなる。
ひかりのなか、わたしたちはいつも水ぎわをあるいた。
憂いもよろこびも、流れついては過ぎ去っていった。
どんなにつよい風がふいても、帰ろう。
たゆたえども沈まず。
応募時のタイトル:「Tidal」




写真集
守田衣利『Moon Rainbow』

―――娘の誕生から18年間、幸せと安らぎ、苦しみと孤独が
同時にあるような家族という存在を、カメラを通して見つめた。
本作は、2005年から2023年まで、娘が誕生してから大学に進学するまでの18年間の、家族3人の暮らしを記録したものです。娘をニューヨークで出産した後、ハワイのマウイ島へ移住し、そこから定住の地を探す旅が始まりました。東京、上海、熊本、宮崎、サンタモニカと点々とし、最終的にたどり着いたのがサンディエゴの海辺の街でした。
産婦人科の診察室のモニターで規則的に明滅する光を見た瞬間から、一人の人間が初めて笑い、立ち上がり、言葉を話し、さまざまな価値観を身につけていく過程は、作家にとってすべてが驚きの連続であり、それらは自らが更新されていく経験でもあったと言います。幸せや安らぎ、苦しみと孤独が同時にあるような、複雑で込み入った存在である家族を、カメラを通して日々記録することで、写真からその存在を理解しようとしてきました。
透徹した視線と一定の距離感から家族を見つめ、18年という長い年月で捉えた写真の束は、プライベート・ドキュメンタリーという範疇にとどまらず、時空や国境を越えた、家族という普遍的な物語へと接続するでしょう。
★2025年4月20日発売・雑誌『写真』(Sha Shin Magazine)vol.7に紹介記事が掲載
守田衣利『Moon Rainbow』
2025年7月6日発行
著者:守田衣利
造本設計:町口 覚
発行所:ふげん社
サイズ:A4変形(215×245mm)
仕様:上製本
頁数:140頁
写真点数:82点
定価:6,600円(税込)
ISBN:978-4-908955-42-6

守田衣利 Eri Morita
熊本県生まれ。国際写真センタージェネラルスタディース科修了。
『第7回写真新世紀』優秀賞、Tory Burch x ICP Fellowship他受賞。
主な個展に『Close your eyes, make a wish.』銀座ニコンサロン、
『Home Drama』SOHO Photo Galleryがある。
05年に写真集『ホームドラマ』上梓。カリフォルニア州に夫と猫二匹と在住。
飯沢耕太郎賞
中村 烈(フォトレツ)「92歳、タケの暮らし」

©︎Isao Nakamura

中村 烈(フォトレツ) Isao Nakamura
1980年5月6日 青森県八戸市出身、在住。
身近にありながら価値が未確定なモノをテーマに作品を制作。最近は「イタコ」や「オシラサマ」などの民間信仰・習俗を主に撮影しており、2023年にはイタコの口寄せをテーマにした写真展「GrandmaComesBack」をソニーイメージングギャラリーで開催している。
町口覚賞
宮地祥平「Future Family」

©︎Shohei Miyachi

宮地祥平 Shohei Miyachi
宮地祥平 (1989年静岡生) は コミュニケーション、アイデンティティ、パフォーマンスのテーマを中心に制作を続ける写真家である。School of Visual Artsより美術学士号 、Pratt Instituteより美術修士号を取得。
第四回ノミネート作品
岩本賢吾「Dialektik」
木全虹乃楓「ひびをすべて喰むころには」
コウ・レイエイ「彼のこと、今でも知らない」
島津啓「水沼」
中尾睦美「針の音」
長垣夏希「蟄虫啓戸(すごもりのむしとをひらく)」
中村 烈「92歳、タケの暮らし」
藤崎陽一「PHOTOGRAPHIC LETTERS」
宮地祥平「Future Family」
守田衣利「Tidal」